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大東京信用組合——都心の大型信組は、なぜ預金の半分しか貸さないのか

預貸率49.9%、預金6,614億円、不良債権比率2.94%。港区に本店を置く大東京信用組合。信組として全国有数の規模を持つ「だいとうきょう」が、なぜ預金の半分しか貸さないのか。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 東京都

東京都の港区に本店を置く大東京信用組合は、預金6,614億円を持つ信用組合だ。信用組合として全国でも有数の規模を持つ。港区を中心に、東京都内に41の店舗を広げている。「だいとうきょう」の名のとおり、巨大都市・東京に根ざす大型の信用組合だ。

本店を置く港区は、新橋・虎ノ門・赤坂など、オフィスと商業の集まる都心の一角だ。大企業の本社が集まる一方で、その周辺には、無数の中小・零細の事業者がひしめく。飲食、小売、サービス、建設、町工場——東京の都心とその周辺には、こうした小さな商いの担い手が層をなしている。大東京信用組合は、こうした巨大都市・東京の中小・零細事業者に根ざしてきた信用組合だ。

この信組の数字で目を引くのは、預貸率49.9%という、ちょうど半分の水準だ。6,614億円という大きな預金を集めながら、貸出はその半分にとどまる。なぜ、都心の大型信組は、預金の半分しか貸さないのか。同じ東京の信組とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。大東京信用組合の預金は6,614億円、貸出金は3,300億円。預貸率は49.9%で、預金のちょうど半分を貸出に回している。自己資本比率は10.69%、不良債権比率は2.94%。店舗数は41、中小企業等への貸出残高は3,300億円で、貸出金のほぼ全額が中小企業等向けだ。

同じ東京で、新宿区を地盤とするあすか信用組合(預貸率83.4%・不良債権比率2.26%)と比べると、対照的だ。大東京信用組合の預貸率49.9%は、あすか信用組合(83.4%)を大きく下回る。規模では大東京信用組合が上回るが、貸出に回す比率では、あすか信用組合のほうがはるかに高い。同じ東京の信組でも、あすか信用組合は預金の8割超を貸し、大東京信用組合は半分にとどめる。これは、両者の集める預金の規模と、貸出先の見極め方の違いを映していると読める。大東京信用組合は、6,000億円を超える豊富な預金を集める一方、その全てを貸し切るだけの貸出先を、慎重に絞り込んでいると読める。

東京の二つの信用組合(令和7年3月末)
 大東京信用組合あすか信用組合
本店港区新宿区
預金6,614億円4,702億円
預貸率49.9%83.4%
自己資本比率10.69%9.59%
不良債権比率2.94%2.26%

ともに東京を地盤とする二つの信組。規模では大東京信用組合が上回るが、預貸率では あすか信用組合がはるかに高い。豊富な預金を集めながら貸出を半分にとどめる大東京信用組合の姿が数字に表れている。

巨大都市とともに——大東京信用組合の歩み

大東京信用組合は、巨大都市・東京の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。都心とその周辺の飲食店、小売店、サービス業、町工場——こうした小さな商いの担い手が組合員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。大東京信用組合は、こうした事業者に寄り添いながら、信用組合として全国有数の規模へと成長してきた。

東京という土地は、信用組合にとって、預金を集めやすい地盤だ。巨大都市の経済規模と人口は、豊富な預金をもたらす。一方で、信用組合が貸す相手は、組合員である中小・零細事業者に限られる。豊富に預金は集まるが、それを貸し切るだけの貸出先を、組合員のなかで堅実に見極める——この構図が、49.9%という預貸率の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、運用などに向かう。中小企業等への貸出残高が貸出金のほぼ全額を占めることからも、組合員である中小事業者への貸出を中心に営まれていることがうかがえる。

49.9%を、都心の信組から読む

大東京信用組合の預貸率49.9%という水準は、豊富な預金を集めながら、貸出先となる組合員の中小事業者を、堅実に見極めていることの表れだと読める。巨大都市・東京には無数の中小・零細事業者がいるが、信用組合がその全てに貸せるわけではない。組合員のなかで、返済の見込める相手を見極めて貸すことで、預金の半分を貸出に回している。よく貸す あすか信用組合とは対照的に、大東京信用組合は規模の大きさゆえに、貸出を半分にとどめる姿になっていると読める。

不良債権比率2.94%という水準は、信用組合として極端に高いわけではない。自己資本比率10.69%という水準も、信用組合として手堅い。巨大都市で豊富な預金を集め、組合員の中小事業者に堅実に貸し、残りを運用に向ける——それが、大東京信用組合の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

東京の経済とともに

大東京信用組合の数字は、無数の中小・零細事業者がひしめく巨大都市・東京という土地と、そこで豊富な預金を集めながら堅実に貸す大型信組の歩みの、両方を映している。預金のちょうど半分を組合員に貸しながら、残りを運用に向け、信用組合として全国有数の規模を保ってきた。巨大都市・東京の経済が、6,614億円という大きな預金と、49.9%という預貸率に表れている。

銀行や信用金庫・信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。大東京信用組合を見れば、巨大都市・東京の中小・零細の経済と、そこに根ざす大型信組の姿が浮かぶ。東京の他の協同組織金融機関は、人を見て貸す第一勧業信用組合、都内最大級の信金城北信用金庫、中小に貸す芝信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京都の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。信用組合は、組合員である中小・零細事業者に貸す相手が限られるため、豊富な預金を集める都市部の大型信組では、貸出が追いつかず預貸率が半分前後にとどまることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。あすか信用組合の数値も同出典。
沿革・地域(港区に本店を置き、東京都内を地盤とする信用組合であること、信用組合として全国有数の規模を持つこと、港区が新橋・虎ノ門・赤坂などオフィスと商業の集まる都心であること、組合員である中小・零細事業者を対象とすること)に関する記述=大東京信用組合および各種公開情報にもとづく。
東京・港区の地理・経済(巨大都市、都心、新橋、虎ノ門、赤坂、中小・零細事業者)に関する記述=各種公開情報。

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