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ハナ信用組合——朝銀系の受け皿として生まれた信組は、何に貸すか

預貸率86.8%、自己資本比率7.92%、不良債権比率3.64%。渋谷区に本店を置くハナ信用組合。破綻した関東信越の朝銀系信用組合の受け皿として2002年に設立された信組の数字を、出典を示して読みます。

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ニホン銀行紀行 ・ 東京都

東京都渋谷区に本店を置くハナ信用組合は、預金2,862億円、貸出金2,484億円、店舗17。東京を中心に関東・甲信越に店舗を持つ信用組合で、在日朝鮮人系の信用組合である「朝銀(ちょうぎん)」系の系譜に連なります。「ハナ」は朝鮮語で「一つ」を意味します。

「朝銀」は、戦後、在日朝鮮人系の事業者の相互扶助のために各地で設立された信用組合の系譜です。なお、ここでいう朝銀(朝鮮総連系)は、在日韓国人系(民団系)の「商銀」とは別系統です。ハナ信用組合は、2002年、経営破綻した関東信越地区の5つの朝銀系信用組合(朝銀東京・朝銀千葉・朝銀新潟・朝銀長野・朝銀関東)の受け皿として設立され、同年に事業を開始しました。その再生には公的資金が投入されています。バブル経済の崩壊後、朝銀系の信用組合は各地で破綻・再編が相次ぎ、その事業を承継する受け皿として生まれた信組です。

まず、数字を並べる

ハナ信用組合の預金は2,862億円、貸出金は2,484億円、預貸率86.8%。自己資本比率は7.92%、不良債権比率は3.64%。中小企業等向けの貸出先は1,891件です。

ハナ信用組合(令和7年3月末)
預金2,862億円
貸出金2,484億円
預貸率86.8%
自己資本比率7.92%
不良債権比率3.64%
中小企業等向け貸出先1,891件
店舗17店

預貸率86.8%。朝銀系の受け皿として生まれた信組の数字を読む。

86.8%を、組合員基盤から読む

預貸率86.8%は、本紀行で見てきた信用組合のなかでも際立って高く、地方銀行に匹敵する水準です。集めた預金の九割近くを組合員に貸し出しています。在日朝鮮人系のコミュニティという明確な組合員基盤のもと、その資金需要に深く応えてきたことの表れと読めます。既存の金融制度のなかで融資を受けにくかった人々の相互金融として始まった朝銀系の経緯が、地元の組合員に深く貸す姿勢につながっていると読めます。

自己資本比率7.92%は、信用組合として国内基準は上回るものの、際立って厚いわけではありません。よく貸すぶん、資本の厚みは控えめです。不良債権比率3.64%は中庸の水準で、破綻した朝銀系信組の事業を承継して再出発した経緯を経て、堅実な経営に努めてきたことがうかがえます。もちろん個別の事情も絡むため断定はできませんが、朝銀系の受け皿として生まれた信組という成り立ちを抜きに、この数字は読めません。

ハナ信用組合が示すのは、破綻した朝銀系信組の受け皿として生まれ、組合員に深く貸す信組の姿です。預貸率86.8%という高さは、コミュニティという明確な組合員基盤のもと、その資金需要に応えてきたことの表れ。公的資金を受けて再出発した歩みが、この数字の背景にあります。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

信用組合が融資できる相手は原則として「組合員」に限られます。組合員になれるのは、中小企業等協同組合法などにより、その信用組合の地区内に住所や事業所がある中小事業者・勤労者などで、員外への貸出には制限があります。事業者には規模の制限もあり、大企業は組合員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと組合員に絞られます。ハナ信用組合にとって、その組合員基盤は、在日朝鮮人系のコミュニティを中心とする事業者や住民です。破綻した5つの朝銀系信用組合の事業を引き受け、預金者と取引先を承継する受け皿となったことで、関東・甲信越にまたがる組合員基盤を持つに至りました。明確な組合員基盤に深く貸す姿が、際立って高い預貸率に表れていると読めます。

同じ都の、信用組合と並べてみる

同じ東京には、在日韓国人系(商銀=民団系)のあすか信用組合(預貸率83.4%)があります。系統は異なりますが、ともに高い預貸率で組合員の資金需要に深く応える点は共通しています。城東の下町に根ざす亀有信用金庫(預貸率44.3%)とあわせて、東京の協同組織金融機関の姿は各記事もどうぞ。

数字は、組合の成り立ちを映す

預貸率86.8%という際立った高さは、破綻した朝銀系信組の受け皿として生まれ、コミュニティの組合員に深く貸してきた信組の姿を映しています。ハナ信用組合の数字は、朝銀系の系譜を引き継ぐ信組の、いまの記録です。預貸率の読み方は預貸率の読み方を、東京都の他の金融機関は東京都の地域金融機関のページもどうぞ。

ハナ信用組合と融資・保証のはなし

ハナ信用組合は、地元にしっかり貸す信用組合です。実際に借入れを考えるなら、土台になるのは事業の中身を伝える準備と、保証制度の理解。借りる側が知っておきたい融資・保証の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
ハナ信用組合の沿革(2002年に経営破綻した朝銀東京・朝銀千葉・朝銀新潟・朝銀長野・朝銀関東の5信用組合の受け皿として設立、公的資金が投入されたこと、関東・甲信越に店舗を持つこと、朝銀系の信用組合であること、「ハナ」が朝鮮語で「一つ」を意味すること)に関する記述=ハナ信用組合公開情報・預金保険機構公表・各種公開情報にもとづく。
朝銀系・商銀系の系譜、バブル期以降の朝銀系信用組合の破綻・再編に関する記述=各種公開情報。
あすか信用組合・亀有信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用組合の組合員・員外貸出に関する記述=中小企業等協同組合法ほか関係法令にもとづく一般的な整理。

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