共立信用組合——町工場のまち大田区で、きょうしんは何に貸すか
預貸率47.2%、預金1,696億円、自己資本比率10.34%、不良債権比率2.61%。東京都大田区に本店を置く共立信用組合。大田区内に本店を置く唯一の金融機関「きょうしん」が、ものづくりのまちで何に貸すのか。同じ東京の信用組合と比べながら、その数字と歴史を読む。
- 2026.06.19【保証協会】26年度補正予算成立、セーフティネット保証5号の事前相談を開始。指定業種で、直近月の売上高が前年同月比で5%以上減少等の要件(経産省PDF)を満たす中小事業者が対象。
東京都の大田区に本店を置く共立信用組合は、預金1,696億円を持つ信用組合だ。店舗16。地元では「きょうしん」と呼ばれる。注目すべきは、大田区内に本店を置く唯一の金融機関だということ。地銀も信用金庫も区外に本店を置くなか、共立信用組合だけが大田区に本店を構え、この区のものづくりと暮らしに根を張ってきた。
本拠の大田区は、東京の南、多摩川を挟んで川崎と向き合う区だ。町工場のまちとして知られ、金属加工・機械・精密部品などの中小・零細工場が密集する。「大田区の工場群が結集すれば、図面一枚から人工衛星でも作れる」と言われるほど、多様で高度な加工技術が集まる、日本有数のものづくりの集積地だ。あわせて、京浜工業地帯の一角を占める臨海部、商店街の連なる住宅地、羽田空港の玄関口——多様な顔を持つ。共立信用組合は、こうした大田区を中心とするものづくりと商いに根ざし、零細事業者と住民を組合員として支えてきた信用組合だ。
この信組の数字で目を引くのは、預貸率47.2%という標準的な水準と、不良債権比率2.61%という低さだ。預金の半分弱を貸出に回しつつ、焦げ付きは抑えられている。なぜ、町工場のまちの信組は、こうした数字になるのか。同じ東京を地盤とする信用組合とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。共立信用組合の預金は1,696億円、貸出金は801億円。預貸率は47.2%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は10.34%、不良債権比率は2.61%。店舗数は16、中小企業等への貸出残高は805億円、貸出先は3千件を超える。
同じ東京都を地盤とする信用組合と比べてみる。規模で並ぶ大東京信用組合(預貸率49.9%・不良債権比率2.94%)は、預貸率も焦げ付きも共立信用組合と近い水準だ。一方、人を見てよく貸すことで知られる第一勧業信用組合(預貸率81.5%)と比べると、共立信用組合の預貸率47.2%は控えめに映る。同じ東京の信用組合でも、貸す量にはそれぞれの地盤と方針が表れる。共立信用組合は、町工場のまちで零細事業者に密着して貸しつつ、預金の半分強は手元に置き、焦げ付きを低く保っていると読める。ものづくりの現場に根ざしながら、堅実さを保つ姿勢がうかがえる。
| 共立信用組合 | 大東京信用組合 | 第一勧業信用組合 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 大田区 | 新宿区 | 新宿区 |
| 預金 | 1,696億円 | 6,614億円 | 3,611億円 |
| 預貸率 | 47.2% | 49.9% | 81.5% |
| 自己資本比率 | 10.34% | 10.69% | 9.13% |
| 不良債権比率 | 2.61% | 2.94% | 2.71% |
東京の信用組合のなかでも、貸す量には地盤と方針の差がある。共立信用組合は、町工場のまちで密着して貸しつつ、低い焦げ付きを保っている。
大田区とともに——共立信用組合の歩み
共立信用組合は、合併を重ねて大田区のものづくりに根を張ってきた信用組合だ。1978年(昭和53年)4月、京浜信用組合と明和信用組合の対等合併によって設立された。「共立」の名は、二つの組合が立場を等しくして一つになった、その成り立ちに由来する。その後、2002年(平成14年)には大栄信用組合と東京富士信用組合の事業を相次いで譲り受け、大田区を中心とする地盤を固めた。営業地域は東京23区に加え、多摩川を越えた神奈川県の川崎市・横浜市の一部にも広がる。京浜工業地帯のものづくりが、区の境を越えてつながっているからだ。
大田区という土地は、信用組合にとって、組合員の資金需要のある地盤だ。金属加工、機械、精密部品——高度な技術を持つ零細工場がひしめき、設備投資や運転資金の必要が絶えない。大田区内に本店を置く唯一の金融機関として、この区のものづくりに密着して貸す——それが共立信用組合の役割だ。「コミュニティーバンク」を掲げ、地域の中小企業と暮らしに寄り添う姿勢を、設立以来貫いてきた。
47.2%と2.61%を、大田区から読む
共立信用組合の預貸率47.2%という水準は、町工場のまち大田区で、組合員の資金需要に密着して応えていることの表れだと読める。高度な技術を持つ零細工場がひしめく大田区は、信用組合が貸す相手のある土地だ。共立信用組合は、大田区内唯一の本店を構える金融機関として、ものづくりの現場に密着して貸し、預金の半分弱を貸出に回している。残りは有価証券などの運用に向かう。
不良債権比率2.61%という低さは、ものづくりの現場を見極めながら、堅実に貸してきたことを映す。零細工場への融資は、技術や受注の浮き沈みと隣り合わせだが、共立信用組合は地縁・人縁のもとで貸し先を見極め、焦げ付きを低く保ってきた。自己資本比率10.34%は、信用組合として基準を満たす水準だ。町工場のまちで唯一本店を構える信組として、ものづくりに密着して貸し、堅実さを保つ——それが、共立信用組合の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
東京の経済とともに
共立信用組合の数字は、大田区という町工場のまちと、そこで唯一本店を構えてものづくりに貸す信組の歩みの、両方を映している。預金の半分弱を地元の組合員に貸し、金属加工や精密部品の零細工場を支えてきた。日本有数のものづくりの集積地・大田区の経済が、47.2%という預貸率と、2.61%という低い焦げ付きに表れている。
銀行や信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。共立信用組合を見れば、大田区のものづくりの経済と、そこに密着して貸す信組の姿が浮かぶ。東京都の他の金融機関は、新宿の大東京信用組合、人を見て貸す第一勧業信用組合、賀川豊彦に発する下町の中ノ郷信用組合もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京都の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。
預貸率47.2%の共立信用組合は、地域に根ざして組合員に貸す信用組合です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。
- → 口座を育てる
- → 積立で信用をつくる
- → 与信枠の考え方
- → 創業支援保証とは
- → セーフティネット保証とは
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。大東京信用組合・第一勧業信用組合の数値も同出典。
沿革・地域(大田区大森西に本店を置き大田区内に本店を置く唯一の金融機関であること、1978年4月に京浜信用組合と明和信用組合の対等合併により設立され、2002年に大栄信用組合・東京富士信用組合の事業を譲り受けたこと、営業地域が東京23区および神奈川県川崎市・横浜市の一部に及ぶこと、「コミュニティーバンク」を掲げていること、大田区が金属加工・機械・精密部品などの中小・零細工場が密集する「ものづくりのまち」であること)に関する記述=共立信用組合および各種公開情報にもとづく。
大田区の地理・経済(大田区、大森、町工場、金属加工、精密部品、京浜工業地帯、羽田空港、多摩川)に関する記述=各種公開情報。
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