東京信用金庫——池袋の信金は、少ない店舗でなぜ預金の6割を貸すのか
預貸率62.8%、預金1兆2,290億円、自己資本比率11.18%、不良債権比率1.99%。豊島区に本店を置く東京信用金庫。池袋を中心とする城北に根ざす信金が、わずか30店でなぜ預金の6割を貸し、低い焦げ付きを保つのか。同じ城北の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
東京都の豊島区に本店を置く東京信用金庫は、預金1兆2,290億円を持つ信用金庫だ。店舗30。池袋を中心に、東京の城北地域から周辺を地盤としている。預金1兆円を超える大型信金でありながら、店舗はわずか30と、一店あたりの規模が際立って大きい。
本拠の豊島区は、池袋という巨大なターミナルを擁する、城北と呼ばれる一帯の中心だ。池袋は新宿・渋谷と並ぶ副都心であり、商業・サービス業が集積する。周辺の城北(豊島・北・板橋など)には、住宅地と中小・零細事業者、町工場、商店が層をなす。東京信用金庫は、こうした池袋を中心とする東京の城北に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率62.8%という高さと、店舗わずか30という効率、そして不良債権比率1.99%という低さだ。少ない店舗でよく貸し、しかも焦げ付きが低い。なぜ、池袋の信金は、こうした数字になるのか。同じ城北を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。東京信用金庫の預金は1兆2,290億円、貸出金は7,719億円。預貸率は62.8%で、預金の6割を貸出に回している。自己資本比率は11.18%、不良債権比率は1.99%と低い。店舗数は30、中小企業等への貸出残高は7,414億円。預金1兆円超の大型信金で店舗30は、一店あたりの規模が大きいことを意味する。
同じ東京の城北で、荒川区を中心とする城北信用金庫(預貸率49.3%・店舗89)と比べると、東京信用金庫のほうが、店舗はずっと少ないのに、預貸率は高い。東京信用金庫の預貸率62.8%は城北信用金庫(49.3%)を大きく上回り、店舗数は東京信用金庫(30)が城北信用金庫(89)を大きく下回る。同じ城北を地盤としても、東京信用金庫は少ない店舗で都心に集中し、よく貸す姿勢が数字に表れている。不良債権比率も東京信用金庫(1.99%)は城北信用金庫(3.13%)を下回り、低い焦げ付きを保っている。
| 東京信用金庫 | 城北信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 豊島区 | 荒川区 |
| 預金 | 1兆2,290億円 | 2兆6,571億円 |
| 預貸率 | 62.8% | 49.3% |
| 店舗数 | 30 | 89 |
| 不良債権比率 | 1.99% | 3.13% |
ともに東京の城北を地盤とする二つの信金。東京信用金庫は少ない店舗でよく貸し、焦げ付きも低い。同じ土地でも経営の姿勢が対照的なことが数字に表れている。
池袋・城北とともに——東京信用金庫の歩み
東京信用金庫は、城北の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。池袋の商店、城北の町工場や中小製造業、サービス業、そして住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。東京信用金庫は、合併を経て、池袋を中心に城北に根ざす大型信金へと成長してきた。店舗を絞り、一店あたりの規模を大きくする経営で、効率を保ってきた。
東京の城北という土地は、信用金庫にとって、会員の資金需要のある地盤だ。池袋という副都心の商業、周辺の住宅地と中小・零細事業者、町工場と、多様な業種が広がる。地元の中小に密着し、会員との関係のもとで貸す——この信用金庫ならではの貸し方が、預貸率62.8%という高さを支えている。そして、少ない店舗に集中するからこそ、一件あたりの貸出をよく見極められ、不良債権比率1.99%という低い焦げ付きを保ってきたと読める。よく貸しながら焦げ付きが低いのは、都心の資金需要の厚さと、絞った店舗での目の行き届いた審査の両方によるものと読める。
62.8%を、城北から読む
東京信用金庫の預貸率62.8%という高さと、不良債権比率1.99%という低さは、池袋という副都心を中心とする城北で、少ない店舗に集中し、会員の資金需要によく応えながら、焦げ付きを抑えてきたことの表れだと読める。池袋の商業、城北の中小・零細事業者が層をなす土地は、信用金庫が貸す相手に事欠かない。東京信用金庫は、店舗を絞って一店あたりの規模を大きくし、目の行き届いた審査でよく貸し、低い焦げ付きを保っている。
同じ城北の城北信用金庫が89店で広く構えるのに対し、東京信用金庫はわずか30店に集中する。これは、同じ土地でも信金ごとに経営の選択が異なることを示す。池袋を中心とする城北で、少ない店舗で深く貸し、低い焦げ付きを保つ——それが、東京信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。都心に集中する大型信金の、一つのかたちがここにある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
東京の経済とともに
東京信用金庫の数字は、池袋を中心とする城北という土地と、そこで少ない店舗に集中してよく貸す大型信金の歩みの、両方を映している。預金の6割を地元の会員に貸し、低い焦げ付きを保ちながら、城北の中小・零細事業者を支えてきた。副都心・池袋の商業と城北のものづくりの経済が、62.8%という高い預貸率と、1.99%という低い焦げ付きに表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。東京信用金庫を見れば、池袋・城北の経済と、そこで効率よく貸す大型信金の姿が浮かぶ。東京の他の信用金庫は、同じ城北の城北信用金庫、巣鴨の巣鴨信用金庫、多摩地域の多摩信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。城北信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(豊島区に本店を置き、池袋を中心に東京の城北地域を地盤とする信用金庫であること、合併を経て城北に根ざす大型信金になったこと、店舗を絞り一店あたりの規模を大きくする経営であること、豊島区が池袋という副都心のターミナルを擁し商業・サービス業が集積すること、城北の豊島・北・板橋などに住宅地と中小・零細事業者・町工場・商店が層をなすこと)に関する記述=東京信用金庫および各種公開情報にもとづく。
東京・城北の地理・経済(豊島区、池袋、副都心、城北、北区、板橋、ターミナル、町工場)に関する記述=各種公開情報。