小浜信用金庫——若狭の港町で、100年つづく信金は何を守るか
預貸率35.1%、預金1,072億円、自己資本比率23.98%、不良債権比率7.13%。福井県小浜市に本店を置く小浜信用金庫。若狭地方に根ざし2025年に創立100周年を迎えた信金が、なぜ預金の3分の1ほどしか貸さず、厚い自己資本を積むのか。同じ福井の金融機関と比べながら、その数字と歴史を読む。
- 2026.06.19【保証協会】26年度補正予算成立、セーフティネット保証5号の事前相談を開始。指定業種で、直近月の売上高が前年同月比で5%以上減少等の要件(経産省PDF)を満たす中小事業者が対象。
福井県の小浜市に本店を置く小浜信用金庫は、預金1,072億円を持つ信用金庫だ。店舗7。略称は「はましん」。若狭地方を地盤とし、若狭町以西の小浜市・高浜町・おおい町・若狭町に店舗を構える。福井県の信用金庫のなかでは、小ぶりな部類に入る。
本拠の小浜市は、若狭湾に面した港町だ。古くは大陸や朝鮮半島との玄関口であり、奈良・京都へ海産物を運んだ「鯖街道」の起点として知られる。リアス式海岸の若狭湾は漁業の地であり、かつて都に食材を納めた「御食国(みけつくに)」の一つとも伝わる。一方で、若狭は人口減少と高齢化の進む地域でもある。小浜信用金庫は、こうした若狭の港町に根ざし、2025年に創立100周年を迎えた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率35.1%という低さと、自己資本比率23.98%という厚さだ。預金の3分の1ほどしか貸出に回さず、資本を厚く積んでいる。一方、不良債権比率は7.13%とやや高めだ。なぜ、若狭の信金は、こうした数字になるのか。同じ福井県の金融機関とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。小浜信用金庫の預金は1,072億円、貸出金は376億円。預貸率は35.1%で、預金の3分の1ほどを貸出に回している。自己資本比率は23.98%、不良債権比率は7.13%。店舗数は7、中小企業等への貸出残高は337億円。
同じ福井県で、県内最大の信金である福井信用金庫(預貸率46.5%・自己資本比率16.34%)と比べると、小浜信用金庫の特徴がよりはっきりする。小浜信用金庫の預貸率35.1%は福井信用金庫(46.5%)を下回り、より貸出を抑えている。一方、自己資本比率は小浜信用金庫(23.98%)が福井信用金庫(16.34%)を上回り、際立って厚い。不良債権比率は両者とも高めだが、小浜信用金庫(7.13%)が福井信用金庫(5.29%)をやや上回る。県都・福井に近い福井信用金庫と、若狭の小さな港町の小浜信用金庫——同じ福井県の信金でも、地盤とする土地の規模と性格の違いが、数字に表れていると読める。
| 小浜信用金庫 | 福井信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 小浜市 | 福井市 |
| 預金 | 1,072億円 | 8,358億円 |
| 預貸率 | 35.1% | 46.5% |
| 自己資本比率 | 23.98% | 16.34% |
| 不良債権比率 | 7.13% | 5.29% |
ともに福井県を地盤とする信金。小浜信用金庫は規模が小さく、貸出を抑え、際立って厚い自己資本を積む。若狭という地盤の性格が背景にある。
若狭の港町とともに——小浜信用金庫の歩み
小浜信用金庫は、1925年(大正14年)8月、「有限責任小浜信用組合」として設立された。1952年(昭和27年)に信用金庫へ転換し、小浜信用金庫となった。以来、若狭地方の中小・零細事業者や住民の相互扶助の金融機関として歩み、2025年に創立100周年を迎えた。隣接する敦賀信用金庫とは若狭町を境に競合せず、西部の高浜町では京都府北部を地盤とする京都北都信用金庫と接している。
若狭という土地は、信用金庫にとって、貸す相手の限られた地盤でもある。漁業と観光、地元の商店や中小事業者が中心で、大きな工業地帯や成長企業の集積があるわけではない。人口減少と高齢化も進む。会員の資金需要に応えつつ、貸せない分は有価証券などの運用に向ける——この姿が、預貸率35.1%という低い水準と、預金の多くを運用に回す構造を生んでいる。自己資本比率23.98%という際立った厚さは、貸出を抑え、長く堅実な経営を続けてきたことの表れだと読める。一方、不良債権比率7.13%は、限られた貸出先のなかで地域の事業の浮き沈みを引き受けてきたことを映していると読める。
なお、この「小浜(Obama)」という地名は、2008年の米大統領選を機に、思わぬかたちで世界の注目を集めた。市民有志が「オバマを勝手に応援する会」を結成し、当時の市長がバラク・オバマ氏に若狭塗の箸と礼状を贈ると、署名入りの返礼が届いたと伝えられる。小浜市はちょっとした「オバマ・ブーム」に沸き、その名は国内外で取り上げられた。英語名を「Obama Shinkin Bank」とする小浜信用金庫もまた、地名を共有する地元の金融機関として、この渦中で名前の一致を話題にされた一つだった。土地の名が、思いがけず金融機関の名を世界へ運んだ、つかのまの出来事だったと読める。
35.1%を、若狭から読む
小浜信用金庫の預貸率35.1%という水準は、貸す相手の限られた若狭の港町で、無理に貸さず、運用と厚い資本で守りを固めていることの表れだと読める。漁業と観光の若狭は、大企業や工業の集積に乏しく、信用金庫が貸せる先がおのずと限られる。小浜信用金庫は、その地で会員に着実に貸しつつ、預金の多くを運用に向け、自己資本を厚く積んできた。
自己資本比率23.98%という厚い資本は、貸出を抑え、地域とともに長く生き残ることを選んだ姿だと読める。不良債権比率7.13%という高めの焦げ付きは、限られた貸出先で地域の浮き沈みを引き受けてきたことの表れだ。100年つづく若狭の港町の信金が、貸さずに守る——それが、小浜信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
福井の経済とともに
小浜信用金庫の数字は、若狭の港町という土地と、そこで100年つづいてきた小さな信金の歩みの、両方を映している。預金の3分の1ほどを地元の会員に貸し、残りを運用に向け、厚い資本で守りを固めながら、若狭の中小・零細事業者と住民を支えてきた。漁業と観光、人口減少という若狭の現実が、35.1%という預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。小浜信用金庫を見れば、若狭の経済と、そこで守りを選んだ信金の姿が浮かぶ。福井県の他の金融機関は、県都の福井銀行、傘下の福邦銀行、県内最大の信金福井信用金庫もあわせてどうぞ。一つの県に貸す姿勢のフルグラデーションがあることを描いた特集福井県の銀行図鑑もどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。福井県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福井県の地域金融機関のページへ。
小浜信用金庫は、預金の多くを運用に向ける信用金庫です。借りる側も預ける側も、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。福井信用金庫の数値も同出典。
沿革(1925年(大正14年)8月に「有限責任小浜信用組合」として設立され、1952年(昭和27年)に信用金庫へ転換して小浜信用金庫となったこと、略称が「はましん」であること、若狭地方を地盤とし若狭町以西に店舗をもつこと、敦賀信用金庫とは競合せず高浜町で京都北都信用金庫と接すること、2025年に創立100周年を迎えたこと、英語名が「Obama Shinkin Bank」であること)=小浜信用金庫および各種公開情報にもとづく。
2008年の「オバマ・ブーム」(小浜市民有志による「オバマを勝手に応援する会」の結成、当時の小浜市長がバラク・オバマ氏に若狭塗の箸と礼状を贈り、署名入りの返礼が届いたと伝えられること、小浜市が国内外で話題になったこと)に関する記述=AFPBB News(2008年3月4日、2009年11月13日)および各種公開情報にもとづく。
小浜・若狭の地理・経済(小浜、若狭湾、若狭、港町、鯖街道、御食国、漁業、観光、人口減少)に関する記述=各種公開情報。
本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。