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玉島信用金庫——北前船の港町・玉島で、たましんは何に貸すか

預貸率41.7%、預金3,604億円、自己資本比率15.21%、不良債権比率5.56%。岡山県倉敷市玉島に本店を置く玉島信用金庫。北前船で栄えた港町・玉島に根ざす「たましん」が、何に貸すのか。同じ岡山の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 岡山県

岡山県の倉敷市玉島に本店を置く玉島信用金庫は、預金3,604億円を持つ信用金庫だ。店舗20。地元で「たましん」と呼ばれ、本店のある倉敷市玉島地区を中心に、岡山県全域と広島県福山市の一部を事業区域とする。北前船で栄えた港町・玉島に根ざす信金だ。

本拠の玉島は、いまは倉敷市の一地区だが、かつては北前船が寄港する瀬戸内有数の港町として栄えた。江戸期、備中松山藩の外港として干拓と港の整備が進み、新田開発で生まれた綿花と、その積み出しで賑わった。白壁の町家や常夜燈の残る古い町並みが、いまも港町の面影を伝える。曹洞宗の名僧・良寛が修行した円通寺がある地としても知られる。玉島信用金庫は、こうした歴史ある港町・玉島に根ざし、倉敷から岡山県全域、さらに福山にかけての中小事業者と住民に貸してきた。倉敷といえば、美観地区や水島コンビナートを擁する、岡山県第二の都市である。

この信金の数字を見ると、預貸率41.7%という、信用金庫としてやや低めの水準が目を引く。預金3,604億円という規模に対し、貸出金は1,504億円。預金の4割ほどを貸出に回している。一方で自己資本比率は15.21%と厚い。港町の信金は、何に貸しているのか。同じ岡山の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。玉島信用金庫の預金は3,604億円、貸出金は1,504億円。預貸率は41.7%で、預金の4割ほどを貸出に回している。自己資本比率は15.21%、不良債権比率は5.56%。店舗数は20。

同じ岡山県の信金と比べてみる。水島コンビナートを地盤とする水島信用金庫(預貸率37.0%)、岡山市の吉備信用金庫(預貸率35.4%)、県北・津山の津山信用金庫(預貸率44.3%)と並べると、玉島信用金庫の預貸率41.7%は、岡山の信金のなかでは中位だ。水島(37.0%)・吉備(35.4%)よりやや高く、津山(44.3%)よりやや低い。岡山県の信金は総じて預貸率が4割前後と低めで、玉島もその傾向のなかにある。一方で自己資本比率15.21%は信用金庫として十分に厚い。港町・玉島から倉敷・岡山・福山に広がる中小の資金需要に、堅実に応えつつ、資本を厚く保つ姿がうかがえる。不良債権比率5.56%はやや高めで、地域の事業の浮き沈みを引き受けてきたことをうかがわせる。

岡山県の信用金庫(令和7年3月末)
 玉島信用金庫水島信用金庫吉備信用金庫津山信用金庫
本店倉敷市玉島倉敷市岡山市津山市
預貸率41.7%37.0%35.4%44.3%
自己資本比率15.21%12.15%14.38%10.68%
不良債権比率5.56%4.17%4.61%2.61%

いずれも岡山県の信金。岡山の信金は総じて預貸率が4割前後と低め。玉島はそのなかで中位、自己資本は厚めだ。

玉島信用組合から——玉島信用金庫の歩み

玉島信用金庫は、1914年(大正3年)11月7日、産業組合法に基づき「有限責任玉島信用組合」として設立された。組合長・太田幾次郎を中心に、玉島阿賀崎の地で産声をあげた。1951年(昭和26年)10月、信用金庫法に基づき玉島信用金庫へ改組した。2002年(平成14年)には旧・倉敷信用金庫と合併し、倉敷市域に基盤を広げた。本店は倉敷市玉島に置かれ、略称は「たましん」。100年を超える歴史を持つ、岡山県でも有数の老舗信金だ。「地域とともに歩む信用金庫として、ゆたかな生活、夢ある街づくりに努めます」を経営理念に掲げている。

歴史ある港町・玉島から倉敷へという地盤は、信用金庫にとって独特の性格を持つ。かつて北前船と綿花で栄えた玉島の商いの伝統、倉敷美観地区の観光、水島の重化学工業の周辺に広がる中小の下請け・関連企業、そして岡山・福山にかけての地場の中小商工業——堅実だが、大型の資金需要を信金が一手に担うわけではない。水島コンビナートのような大企業の資金は、地銀やメガバンクが担う。信金が貸すのは、その周辺と裾野に広がる中小だ。だから岡山県の信金は総じて預貸率が低めに出る。玉島の預貸率41.7%も、その構造のなかにある。一方で、自己資本比率15.21%という厚い資本を保つのは、無理に貸さず、健全性を保ちながら地域とともに生きる堅実さの表れだと読める。100年を超えて港町から地域を支えてきた信金の、安定した経営姿勢がうかがえる。不良債権比率5.56%というやや高めの数字は、地域の事業の浮き沈みを地道に引き受けてきたことを映していると読める。

41.7%を、港町から読む

玉島信用金庫の預貸率41.7%という岡山の信金のなかで中位の水準は、大企業の資金は地銀が担い、信金は中小の裾野に貸すという岡山の金融構造のなかで、港町・玉島から倉敷・岡山・福山の中小に堅実に貸してきたことの表れだと読める。北前船で栄えた港町で、信金として貸せる相手に貸してきた。預金は着実に集まり、その4割ほどを地域に貸す。

そのうえで、自己資本比率15.21%という厚い資本を保っていることが、この信金の性格を物語る。無理に貸さず、資本を厚く保ち、健全性を守る。100年を超えて港町から地域を支えてきた、老舗信金らしい堅実さ——その姿勢が、41.7%という中位の預貸率と、15.21%という厚い自己資本に表れていると読める。北前船の港町・玉島で、たましんは岡山の経済とともに歩んでいる。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

岡山の経済とともに

玉島信用金庫の数字は、北前船で栄えた港町・玉島という土地と、100年を超えて地域を支えてきた歴史の、両方を映している。倉敷から岡山・福山にかけての中小に堅実に貸しながら、厚い資本を積んで健全性を保ってきた。大企業の資金を地銀が担い信金が中小の裾野に貸すという岡山の構造が、41.7%という中位の預貸率と、15.21%という厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。玉島信用金庫を見れば、港町・玉島から倉敷の経済と、そこで堅実に貸す老舗信金の姿が浮かぶ。岡山県の他の金融機関は、水島の水島信用金庫、岡山市の吉備信用金庫、県北の津山信用金庫、岡山市最大のおかやま信用金庫、県内最大の地銀中国銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。岡山県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、岡山県の地域金融機関のページへ。

玉島信用金庫と融資のはなし

玉島信用金庫は、北前船で栄えた港町・玉島に根ざし、倉敷から岡山・福山の中小に堅実に貸す信用金庫です。地元の事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。4割前後という水準は、大企業の資金を地銀が担い、信金が中小の裾野に貸す地域では、よく見られる。自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の貸し方と備えのバランスが見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。水島信用金庫・吉備信用金庫・津山信用金庫の数値も同出典。
沿革(1914年11月7日に「有限責任玉島信用組合」として設立されたこと、組合長が太田幾次郎であったこと、1951年10月に信用金庫法に基づき玉島信用金庫へ改組したこと、2002年に旧・倉敷信用金庫と合併したこと、本店が倉敷市玉島にあること、岡山県全域と広島県福山市の一部を事業区域とすること、略称が「たましん」であること)=玉島信用金庫および各種公開情報にもとづく。
玉島の地理・歴史(倉敷市玉島、北前船、港町、備中松山藩の外港、新田開発、綿花、円通寺、良寛、倉敷美観地区、水島)に関する記述=各種公開情報・歴史的事実。

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