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興産信用金庫——神田の信金は、少ない店舗でなぜ預金の6割を貸すのか

預貸率63.0%、預金3,981億円、自己資本比率11.65%、不良債権比率3.68%、店舗18。千代田区に本店を置く興産信用金庫。神田・都心に根ざし、少ない店舗で高めの預貸率で貸す信金が、何に貸すのか。同じ東京の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

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東京都千代田区に本店を置く興産信用金庫は、預金3,981億円を持つ信用金庫だ。店舗18。神田を中心に、千代田・中央・港など東京の都心部を地盤としている。

本拠の神田は、江戸以来の商人と職人のまちだ。古書店街、楽器店街、スポーツ用品店街といった専門店の集積で知られ、卸・小売、印刷・製本、飲食、サービス業の中小・零細事業者がひしめく。隣接する日本橋・大手町・丸の内は日本有数のビジネス街であり、神田・神保町から秋葉原にかけては、いまも無数の小さな商いが息づいている。興産信用金庫は、こうした神田・都心の中小事業者に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、店舗18という少なさと、預貸率63.0%という高さだ。少ない店舗で、預金の6割を超えて貸し出している。なぜ、神田の信金は、これだけ効率よく貸せるのか。同じ東京を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。興産信用金庫の預金は3,981億円、貸出金は2,506億円。預貸率は63.0%で、預金の6割を超えて貸出に回している。自己資本比率は11.65%、不良債権比率は3.68%。店舗数は18、中小企業等への貸出残高は2,481億円。貸出先は7千台で、1先あたりの貸出は比較的大きい。

同じ東京で、日本橋の東京シティ信用金庫(預貸率72.1%・店舗30)や、池袋の東京信用金庫(預貸率62.8%・店舗30)と比べると、興産信用金庫は、店舗18という少なさで高めの預貸率を実現している。都心の中小事業者という濃い地盤を、少ない店舗で深く耕している姿だ。預貸率63.0%は、東京シティ信用金庫(72.1%)には及ばないが、東京信用金庫(62.8%)と並ぶ高水準だ。都心の濃い需要を、少ない店舗で効率よく貸す——それが、この信金の特徴だ。

東京都心の信用金庫の比較(令和7年3月末)
 興産信用金庫東京シティ信金東京信用金庫
本店千代田区中央区豊島区
預金3,981億円8,569億円1兆2,290億円
預貸率63.0%72.1%62.8%
店舗183030
不良債権比率3.68%2.87%1.99%

興産信用金庫は、店舗18という少なさで預貸率63.0%を実現している。都心の濃い資金需要を、少ない店舗で効率よく貸している。

神田・都心とともに——興産信用金庫の歩み

興産信用金庫は、神田・都心の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。神田の専門店、印刷・製本の事業者、卸・小売、飲食・サービス業、そして都心で商いを営む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。都心の限られた範囲に店舗を構え、密度の濃い地盤を深く耕してきた。

神田・都心という土地は、信用金庫にとって、会員の資金需要のきわめて濃い地盤だ。狭い面積に、無数の中小・零細事業者が高い密度で集まっている。その濃い地盤を、少ない店舗で深く耕し、中小に貸す——この貸し方が、店舗18という少なさと、預貸率63.0%という高さを両立させている。1店舗あたりの預金・貸出は大きく、効率の高い経営だ。自己資本比率11.65%は、信用金庫の国内基準4%を十分に上回り、健全な水準だ。不良債権比率3.68%は、都心の事業の浮き沈みを引き受けるなかで、おおむね落ち着いた水準を保っていると読める。

63.0%を、神田から読む

興産信用金庫の預貸率63.0%という高さと店舗18という少なさは、神田・都心の濃い資金需要を、少ない店舗で効率よく貸していることの表れだと読める。都心の中小事業者は、狭い範囲に高い密度で集まる。興産信用金庫は、その濃い地盤を少ない店舗で深く耕し、預金の6割を超えて貸出に回している。広く薄くではなく、狭く深く——それが、この信金の貸し方だ。

自己資本比率11.65%という健全な資本と、不良債権比率3.68%というおおむね落ち着いた焦げ付きは、都心で効率よく貸しながら、健全さを保ってきたことを映す。神田の濃い地盤を、少ない店舗で深く耕し、効率よく貸す——それが、興産信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。都心に特化した信金の、一つのかたちがここにある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

東京の経済とともに

興産信用金庫の数字は、神田・都心という土地と、そこで少ない店舗で効率よく貸す信金の歩みの、両方を映している。預金の6割を超えて地元の会員に貸し、健全な資本を保ちながら、神田を中心とする都心の中小・零細事業者を支えてきた。狭い範囲に高い密度で集まる都心の需要が、63.0%という預貸率と18という店舗数に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。興産信用金庫を見れば、神田・都心の経済と、そこで少ない店舗で効率よく貸す信金の姿が浮かぶ。東京都の他の金融機関は、日本橋の東京シティ信用金庫、池袋の東京信用金庫、港区・大田区の芝信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京都の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。

興産信用金庫と融資・保証のはなし

本業の事業融資に踏み込むなら、知っておきたいのが融資の進め方と保証のしくみです。創業期から事業の拡大まで、都心で事業を営む立場で押さえておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。中小事業者がきわめて高い密度で集まる都心の一角を地盤とする信金では、少ない店舗でも濃い需要を深く耕すことで、預貸率が6割を超えることがある。店舗数や自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の貸し方が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。東京シティ信用金庫・東京信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(千代田区に本店を置き、神田を中心に千代田・中央・港など東京の都心部を地盤とする信用金庫であること、都心の限られた範囲に店舗を構え密度の濃い地盤を深く耕してきたこと、神田が江戸以来の商人と職人のまちで古書店街・楽器店街・スポーツ用品店街などの専門店の集積で知られ卸・小売・印刷・製本・飲食・サービス業の中小・零細事業者が集まること、隣接する日本橋・大手町・丸の内が日本有数のビジネス街であること)に関する記述=興産信用金庫および各種公開情報にもとづく。
神田・都心の地理・経済(神田、神保町、千代田区、商人、職人、古書店街、印刷、製本、中小企業)に関する記述=各種公開情報。

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